5,6年くらい前からでしょうか、扇風機売り場を見ていると「DCモーター搭載」と書いてある製品を見かけるようになりました。
当時は扇風機なのに何万円もすることに驚いたものですが、今は少し高めの製品で2万円台後半、安い製品や処分品では1万円以下で販売されています。
そんなDCモーター搭載扇風機、今使っている扇風機から買い替える価値があるのでしょうか。
扇風機派だけれども無駄遣いはしたくない人間が調べてみました。
手っ取り早く知りたい人は[結論]を見てください。
[調査]
「DCモーター 扇風機」で検索をかけると1ページ目からオススメ製品を紹介するブログがズラッと並びます。
それらを見てみると…
・電気代が安い
・風量調整が細かくできる
・微風が自然で優しい
・でも値段が高い
といったメリット・デメリットがほぼ共通して現れます。
「電気代が安いんだけど、値段が高い」
「自分に合った風量に出来てそれほど暑くない時期でも使える」
こう解釈すると、値段さえ安ければ理想の扇風機になりそうです。
ここはこのブログらしく安くて良い物を探したいと思います。
そもそもDCモーターって?
その前にDCがどんなモーターなのかを一般人なりに調べました。
DCとは直流のことで、家庭用コンセントからの交流(AC)の電気を直流に変換してから電圧と周波数を制御し、自在な速度で回転させられるモーターです。
中でも扇風機に使われるものは大雑把にいうと、「『パソコンのマザーボードがCPUファンの回転を制御するための回路』のようなものを搭載しているマイコン制御のモーター」です(素人イメージで申し訳ありません)。
回転力を生み出す部分がリニアモーターカーの底面のように接触していないので、寿命が長かったり、高速回転が出来たり、静かで低振動という長所があります。
反面、電子回路が必要なので、使われる半導体素子が高価だったり、ノイズが音となって聞こる場合が稀にあったり、回路自体がデリケートだったりするそうです。
そんなDCモーター、特性として回転速度の細かな制御と低回転での安定性が上げられます。
これによって「自分に合った風量に出来てそれほど暑くない時期でも使える」が実現できるのだと思われます。
ただし、風量の段階が多くてリモコンや本体の風量ボタンが一つしかない場合は、一つ下げるのにひたすらボタンを押し続けなければならなくなるともいえます(もしくは一度電源オフ)。
DCモーターはなぜ省電力?
省電力の仕組みの前にモーターが回る仕組みですが、「モーターの回転する部分に巻かれたコイルに流す電流のプラスとマイナスを高速で切り替える」→「電磁石のS極とN極が切り替わり、コイルが回転方向に押され引っ張られを繰り返される」ことで回ります。
扇風機のDCモーターはコイルに流す電流を切り替える一瞬だけ電気を流す仕組みなので回転が低ければ低いほど省エネになります。
例えると、自転車のペダルを一定速度で漕いでいるときに、常にペダルに力を加えるような漕ぎ方をしているより、ペダルを踏み下ろす瞬間だけ力を込める漕ぎ方の方が体力を温存できるような感じです(?)。
なぜ高い?
1つ目の要因は、コンセントからの交流を直流に変換して電子制御する回路が組み込まれているからです。これはある程度は納得できます。
安い製品では制御が簡素だったりパーツが安価だったりする可能性があります。
2つ目は、首振り専用モーターが内蔵されていることです。
ACモーターの扇風機はファンの回転をギアで首振り機構に伝えていて、これにより連動して首を振ります。
しかし、DCモーターでこれを行うと、極低速回転時に首振りまで極低速になりますし、極低速回転の超省エネ状態に首振りという負荷を加えると回転が安定しなくなる怖れがあります。
自転車でゆっくり漕いでいるときにダイナモライトを点けると重くて不安定になる感じですね(??)。
3つ目は付加価値です。
家電というものは開発に多くの時間と費用がかかりますので、新しいジャンルの製品は値段が高く、それを購入する人たちに見合う価値が要求されます。
よって、扇風機の場合は使うかどうかわからない温度センサーがついていたりします。
これはある意味仕方のないことで、こなれてきて中小メーカーが中国で大量生産してくる前に最新家電として利益を出さなくてはならない事情があります。
扇風機にとってモーターの次に求められる価値は羽の枚数と形状になります。
これらを専用の設備によって研究に研究を重ねて低消費電力を求めたり、静かで優しい風を追及したりします。
ですので、冒頭にあった「微風が自然で優しい」とは単に低速回転が出来るからではなく、空力的に価値の高い羽によって生み出されるものであり、それをあえて高い価格で勝負できるDCモーター扇風機にウリとして与えているのです。
安ければいいのか
DCモーター扇風機もすでに中小メーカーから低価格品が出されており、大手メーカーも価格の引き下げを余儀なくされています。
安くてもDCモーターであれば低消費電力であることには間違いありません。
問題は部品の精度と耐久性です。
安い製品を多く発売しているある中堅メーカーの扇風機は「設計上の標準使用期間」が6年に設定されています。
実際にはそれよりも長く使えることが多いとは思いますが、その期間を過ぎた場合は経年劣化による発火や事故に至るおそれがあることを制度に基づいて宣言しています。
先ほど書いたようにDCの扇風機は首振り専用のモーターを搭載していて、万が一、このモーターに通電している状態で首を振らなくなった場合でも、ファンは回っているので気づかずに使い続けてしまうことがないかが心配です。
重たい首を振るという動きは単純にファンを回すことよりも負荷が大きいと思います。
昔ながらのデザインの首振りリビング扇が大きくに上下に向けないことからしてもそう推測されます(軸に左右の首振りがついているタイプを除く)。
極端に考えると、扇風機を真下に向くように抱えた状態で自動で首を振り続けたら、首が重くて首振り機構の寿命が縮むでしょう。
もしも首振りの可動部分が劣化などで抵抗が増したりしたときにモーターの回転が抑え込まれてしまったら最悪発火ということもあるかもしれません。
製品評価技術基盤機構(nite)のプレスリリースに古いACモーター扇風機での注意喚起がありました。
この例はさすがに長期使用しすぎですが、昔の日本製家電は今の中国製よりも実際の耐用年数が長いものが多かったと思います。
そう考えると、「数千円高いDCモーターの扇風機を買ったんだから10年使って元を取るぞ」という考え方はあまり得策ではないと思います。
従来の常識が通じない別物ととらえるべき
DC扇風機というものはAC扇風機とは根本的に違う物なのだと思います。
単純にモーターで羽を回すという発想で生まれた扇風機を、電子制御でコントロール出来るDCで再現した「扇風機Ver.2.0」といった感じでしょうか。
オートバイで例えるなら古くから機械的に動作していたキャブレターに対し、効率を求めて電子制御にしたインジェクションであって、前者の方が構造が単純ゆえに低コストでメンテナンス性が良いと思います。
あとは白熱電球に対するLED電球もVer.2.0かもしれません。
しかし、新世代であるLED電球は長寿命だと言われていますが、実際のところは制御基板の部分が先に劣化してLED素子の寿命を全く生かしきれない事例も多いと思います。
オートバイのエンジンも電球もVer.1.0と2.0では大まかな目的は同じでありながら構造が全く違う、いわば新技術による従来品の模倣です。
これらは新旧でコストも寿命も別の常識を持たないとお互いの常識は通じません。
扇風機も同じで、「3年前に1万円で買ったAC扇風機に不満はないけど、1万円でDC扇風機が買えるな買い替えするぞ」と考えるのは早計だと思います。
最悪、2,3シーズン目で調子が悪くなって古いAC扇風機を引っ張り出すなんてことになるかもしれません。
安い理由は同じではない
個人的な偏見ではありますが、安いDC扇風機は思ったよりも早く壊れることを考慮すべきだと思います。
特に電源部に安物の部品が使われていたらある日突然動かなくなるでしょう。
また、ファンの精度が低くて中心がブレていたら床にまで振動が達するでしょう。
さらに、首振り用モーターや機構が安物だったら劣化とともに異音を出し始めるでしょう。ましてや上下に首を振るなんて負荷を想像しただけで苦しそうです。
構造が単純で昔から作られているAC扇風機の安物と価格で勝負するために安さを追求したDC扇風機を同一視しない方が良さそうです。
また、それ以前に最長でも6時間で自動的に電源が切れる機能がついている製品にはAC・DC問わず注意が必要だと思います。
6時間なんて就寝時に使うには短すぎる機能をわざわざつけるのは、長時間連続運転に自信がない可能性があります。
結局のところ買い替えるべきか
ここからは自分の都合で考えて行きついた結果です。
個人的にエアコンは真夏にしか使わないので扇風機を重要視しており、現在は8年くらい前に買ったACモーターの扇風機を使用しています(設計上の標準使用期限は10年)。
これにはファンの前に風を分散させるルーバーがついているので、弱風でも強いと感じるときには和らげることが出来ます。
これにより6月や9月などの「少し暑いときがある」程度の時期にも重宝していました。
しかし、それでも風が強く感じるときもあったので、そんなときは首振り機能がついたUSB扇風機で代用していました。
この2台体制は理論的には正解だと思っています。
DCモーター扇風機でなくてもUSB扇風機で優しい風を左右に送ることが出来る上、AC扇風機を片付けてしまえばUSB扇風機は場所を取らないからです。
しかし、大きな問題もありました。USB扇風機が2年くらいで通電しなくなることが続いたのです。
USBでも首振りタイプは1台2千円以上しますので、安いリビング扇風機とあまり変わりません。
それならばとAC扇風機をDC扇風機に買い替えてしまうかと思い、検索を始めたのがこの記事を書くきっかけでした。
具体的な製品のレビューをあさる
やはりAC扇風機の弱風では涼しい時期には冷えすぎてしまいます。
DC扇風機であれば超微風が可能な上に、羽の多さで優しく涼ませてくれるでしょう。
しかし、その点以外は今のAC扇風機で問題ありません。
ネットのユーザーレビューを見てみても、安いDCモーター扇風機は個体差が激しくて異音や故障の例が多く見つかります。
大手の製品でも2万円弱くらいの製品だと異音問題がいくつかありました。
となると選ぶべきは中核である2万円台後半になりますが、扇風機にそこまでかけられない人間なのはこのブログの他の記事からしてもバレバレです。
電気代が安いといっても一年中使うわけではないのでたかが知れています。
地球に優しいなんて考え方もありますが、実は消費電力(ワット)は実際に使われた電力ではありつつも、機器内を通過してコンセントに無駄に戻っていく分を含めるとACモーターとDCモーターでの差はそれほど大きなものではないそうです(普通のワットチェッカーではわからない)。
[参考]
[結論]
DCモーター扇風機について整理します。
・電気代は安いがたかが知れている
・好みの風量に出来る
・大きな多数の羽による極低速・低騒音回転
・コスパ求めるならACとUSB扇風機の併用
・ACの安物感覚でDCの安物を買わない方が無難
これらのことを踏まえて選び抜いた製品がこちらです。
100均でも売っている「大きめで網目の荒い洗濯ネット」です。
これを扇風機に被せるわけではなく、ファスナーを下にして上部2,3カ所、下部1,2か所を針金(ビニタイ)で止めます。
この止め方にも意味があり、上部は左右に加えて中央も止めると左右と下部の風が増えます。外せば上に逃げるので全体的に弱まります。
下部は左右弱めたい方を止めます。左右均一にしたい場合は左右2カ所か中央のみを止めます。

この写真では上部は3カ所、下部は向かって左のみを止めています。
普通に扇風機のカバーが売っていますが、あちらに比べて2重構造なので風を弱める能力が高く、止め方によって過度な負荷がかかることを防げます。
難点としては、わずかに音が増えます。省エネになるわけでもありません。
そしてメーカーが容認することもありません。自己責任でやっています。
使ってみた感想は、画像の止め方だと右に風が流れていき、すぐ横の壁に当たって拡散するので風に包まれるような感じです。
首振りも併用すると、一番左を向いた瞬間だけ風が多く当たり、弱めのリズム風を使っている感じでした。
元のAC扇風機がしっかりとした物だったので首振りも無音で申し分ありません。
正しい使い方ではないのでオススメは出来ませんが、しばらくはこのやり方で少し暑い時期を乗り越え、標準使用期限の10年が過ぎたらDCモーター扇風機を再検討したいと思います。